トリプル・オゥはこれまで、アクセサリーのみのラインナップを展開してきましたが、ブランド創設15周年の今年、新たなアイテムとして刺繍ポシェットが登場しました✨
今回誕生したポシェットは、ブランドコンセプト「技術とは発想で日常を豊かに」を体現したもの。暮らしにさりげなく寄り添い、おしゃれの幅を広げてくれるアイテムです!
このコラムでは、新たに誕生した刺繍ポシェットの魅力についてご紹介します。
刺繍の新しい可能性を追及する
日本のモノづくり技術は、世界でも高く評価されています。しかし近年、その担い手であるモノづくり人口は年々減少しており、これは大きな課題のひとつです。
刺繍業界も例外ではありません。
私たちは、刺繍技術の持つ可能性をもっと多くの方に知っていただき、刺繍に興味を持ってもらいたいという思いから新商品の開発に取り組みました。
身に着ける工芸品「刺繡ポシェット」の誕生
“普段使いできて、私たちらしい刺繍のプロダクトとはなんだろう?”
真っ先に思い浮かんだのはKASAMORIレースでした「KASAMORIレース」は、トリプル・オゥの母体である株式会社笠盛が開発し、パリの見本市モーダモン(2007)にてVIP PRODUCTを受賞した刺繍技法です。

この技法の特徴は、土台に基布となるものを使わないことと、自由なカタチが作れることです。使うのは刺繍糸のみなので、残布が生まれず必要最低限の資材でカタチを作ることが出来ます。
開発当初は、服飾資材としてアパレルブランドなどに向けて提案していましたが、そこから進化して生まれたのがアクセサリーブランド「トリプル・オゥ」です。
そして今回、再度この笠盛ならではの技法を使って、日常的に使えるもの、刺繍を手に触れ身近に感じられるものを作りたいと考えました。
開発秘話
ファーストサンプル

デザインのアイデアは数年前からあり、スタッフが考えた刺繍巾着がファーストサンプルとなりました。その時は商品化には至らず、しばらく温められていたのですが、コンテストへの応募をきっかけに、再度製品化に向けての開発がスタートいたしました。

セカンドサンプル

最初は、着物から着想を得て、平面から1パーツで立体になる方法を模索しました。
一枚の刺繡パーツを縫製せずに立体にするということにこだわったために、脇のつなぎ目部分に苦戦。紐をつけ編み込んで袋状にする方法を試しました。
最終サンプル

より実用性を重視し、どうしたら買ってくれた人が使いやすいかを深堀り。
紐での編み込みは難しいことと、見た目も装飾的になりすぎることから、脇のつなぎ目は縫製仕様に変更しました。
また、サイズもスマートフォンが入る大きさを考え底を正方形から長方形に変え、最終的なデザインが決まりました。

パーツは刺繍ミシンで縫われますが、1枚縫いあがるのに5〜6時間かかるため1日1回しか動かすことができません。
一度に10個縫えるものの、不良もあるため生産はむずかしいアイテムです。
しっかりとしたテキスタイルを作る為に糸を何度も重ねるので、ミシンオペレーターは針折れや糸そげに注意し、ミシンの速度や糸調子などのバランスを取ります。
そうした繊細なミシンの調整によって、きれいなパーツが出来上がります。
パーツを作ったら、最後は人の手で一つ一つ縫い合わせて袋状に…。
革ひもを通して完成です!
細部へのこだわり

繊細でレースのようなテキスタイルだけど、しっかりカタチが保たれるのは、所々立体的に糸を重ね、テクスチャーを固くすることで骨格の役割を果たしているから。
デザインには、トリプル・オゥの「オーバル」や「スフィア」のエッセンスを取り入れており、培ってきた技術が詰まった一品です。

ブランドロゴもさりげなく刺繍で表現。目立ちすぎないように同色で、糸の種類を変えることで、ひかえめなアクセントにしました。
革でもカゴでもない刺繍バッグ
様々な工程を経て生まれた刺繡ポシェットは、刺繍の軽さ、しなやかさを活かした革でもカゴにもない魅力が詰まったアイテムです。
柄は織物で栄えた桐生のノコギリ屋根や山から吹く空っ風など、桐生の風景からイメージしており
シンプルなカラーバリエーションは、フォーマルにもカジュアルにも使うことが出来ます。



地産地匠アワード2024優秀賞受賞
この刺繍ポシェットは第一回目のアワードで優秀賞を受賞いたしました。
地産地匠アワードは 、地域に根ざすメーカーとデザイナーがつくる、新たなプロダクトを募集する株式会社中川政七商店が主催のアワードです。

プロデュースを担当した広報のノムラ
【受賞コメント】
この刺しゅうポシェットは日本の刺繍技術を多くの人に届けたいとの思いで生まれました。その為、完成して終わりではなく使われて初めて価値のあるものになります。技術としてはまだまだ進化途中です。この受賞をきっかけに使い手の意見と刺繍の可能性を組み合わせて、ニーズに合った技術開発を続けて参りたいと思います。そうした先に、刺繍や織物の産地「桐生」が、私たちのプロダクトを通して世界中の人に親しまれる未来を期待しております。
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